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霧の中から草紅葉
群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがる尾瀬に21日、秋の色を訪ねた。標高約1400メートルの尾瀬ケ原はヤマドリゼンマイやキンコウカなどが色づく草紅葉が見ごろを迎えていた。木道脇の池塘(ちとう)では水面にヒツジグサも色鮮やか。湿原が黄金色に彩られる絶景に魅了された。
群馬県の鳩待峠から徒歩約45分で湿原の西端にある山ノ鼻へ。湿原は朝霧に包まれていた。キツツキの木をたたく音が響いて印象的。木道は平たんで歩きやすかった。
有名な唱歌「夏の思い出」の一節「はるかな尾瀬 とおい空 きりの中に 浮かびくる……」を思わず口ずさんだ。子どものころ音楽の時間にいつも習った歌だ。自分が還暦を迎え、なぜかこの歌の故郷を歩きたかった。夏のミズバショウを秋の草紅葉に替えればいいと。
日の出から約1時間、霧の中から幻想的な白い太陽が姿を見せた。反対側を見ると「白い虹」がアーチを描いていた。虹は真っ白で、霧は濁った白に見えた。あわててレンズ交換して数秒後、構えた瞬間に消えていた。その時、写しておけばと悔やまれた。
虹は空気中の水滴に太陽光があたり、屈折と反射で七色に見える。霧は水滴が小さいため完全に屈折しないので白く見えるという。尾瀬は白い虹の観察でも知られる。
朝霧が消えると、湿原をはさむように東に標高2356メートルの燧(ひうち)ケ岳、西に標高2228メートルの至仏(しぶつ)山が雄姿を見せた。特に牛首分岐と竜宮十字路の間の池塘からは、その2つの日本百名山の展望がすばらしかった。草紅葉の見ごろは10月上旬まで。
紙面より一部抜粋(2015年9月25日発行 東京中日スポーツ)
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