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アオバトの海水浴
その光景は、まるで海水浴を楽しむかのようだ。夏の大波が岩礁に砕けた瞬間、波しぶきを浴びて飛び立つアオバトの群れ。数羽から数十羽がひんぱんに海水を飲みに飛来する。時には七十羽以上にも。五月から十一月まで続くが、七、八月が最盛期。日の出から午前中に数が多く、七〜八時台がピーク。夏の海と、アオバトの群れが織りなす絶景に魅了される。
探鳥地は神奈川県大磯町の照ケ崎海岸。大磯港の西側に位置し、一八八五(明治十八)年開設の日本初の海水浴場としても知られる。戦後、港が建設され風景が変貌する中で、環境保全の動きが起こり、一九九六年二月、アオバトの集団飛来地として、海岸は県の天然記念物に指定された。
アオバトは留鳥または漂鳥として森林に生息するハトの仲間。全長は約三三センチ。体は緑色で、雄は翼の肩の部分が赤紫色。山深い森に生息するので見ることは難しい。
しかし、春から秋に丹沢山地から海水を飲みに飛来する照ケ崎海岸では、目の前で観察できる。吸飲する理由は塩分補給のためといわれるが、いまだに定かな説はない。北海道小樽市の張碓(はりうす)海岸や静岡県の浜名湖なども見られるが、ここの規模は日本一。全国から大勢の観察者がやってくる。
海岸は「関東の富士見百景」にも選定され、箱根連山の右側のかなたに富士の秀麗な姿が望める。四月と九月のダイヤモンド富士も印象的だ。
紙面より一部抜粋(2015年8月10日発行 東京新聞)
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