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夜明けを彩る川霧
初夏の夜明け、広大な新緑のヨシ原に乳白色の川霧が漂う。日が昇ると光を浴びて白からオレンジ、黄と刻々と色を変えて消えて行く。川霧が魅せる一瞬の美はいつも感動的だ。開発による全国的なヨシ原の減少で、湿地の川霧は珍しい風景になった。未来に残したい日本の絶景である。
東京から電車で約1時間。栃木・群馬・茨城・埼玉の4県にまたがる渡良瀬遊水地。東西約6キロ、南北約9キロ、一周約30キロ。湿地面積は北海道を除くと日本最大。2012年7月、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に登録された。
24年前、東京新聞に1年間連載した「渡良瀬有情」の取材班の一員としてここを訪れた。その後も川霧に魅せられ通い続けている。川霧は四季を通して日の出前後に見られるが、早春から初夏と晩秋の季節が規模が大きくて壮観。発生の条件は無風と晴れ、冷え込み、高い湿度など。しかし、期待外れの日も多く、その朝に一喜一憂する。
人気の撮影場所は北エントランス付近の土手と谷中橋北側の川沿い、新赤麻橋東側の土手(通称タカ見台)など。川霧が出そうな朝は必ず写真愛好家が三脚を構えている。掲載の写真は今月上旬、タカ見台から撮影。
帰りに旧谷中村跡を訪ねた。明治時代、足尾銅山鉱毒事件が発生し、国は鉱毒を沈殿させるため遊水地を造った。ヨシ原には住居跡の木立と古道が今も残る。延命院跡に小さな鐘があり、たたくと深い響きが村跡に広がった。自然と歴史を学ぶ野外博物館のような場所である。
紙面より一部抜粋(2015年5月22日発行 東京中日スポーツ)
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