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夕暮れぬ、神様がくれた富士と桜
朝からの春雨がやんだ夕刻、わに塚の桜(山梨県韮崎市)の後方に残雪をまとった富士山が姿を現した。山頂付近に笠(かさ)雲、稜(りょう)線の左側につるし雲。この2つが同時に見られるのは珍しい。今月7日、思いがけない光景に夜桜の撮影に来た人々から歓声がわく。三〜四分咲き。富士山と、ライトアップされて樹氷のように輝く桜の競演は幻想的だった。
わに塚の桜は、淡いピンクの花を咲かせるエドヒガンザクラ。田園風景の中にある小高い場所に、1本だけ立っている。樹齢は約320年で、高さは17メートル。今春は、昨年より5日遅く10日に満開となった。
旧郵政省の「さくらメール」のポスターに使われ、テレビドラマのタイトルバックにも登場した。市の天然記念物。残雪の八ケ岳と、青空を背景に咲く姿が知られ、毎年、首都圏から多くの花見客と写真愛好家が訪れる。晴れた日の撮影ポイントは、夜明け前から三脚がズラリと並ぶ。
翌日は、13キロ離れた実相(じっそう)寺(北杜市)に咲く日本最古の桜「山高神代(やまたかじんだい)桜」を訪ねた。樹齢は約2000年という。品種は、同じエドヒガンザクラ。三春滝桜(福島県)と淡墨(うすずみ)桜(岐阜県)と並ぶ日本三大桜のひとつとされる。大正時代に国の天然記念物に指定されている。満開を迎えた老木の神々しい姿に、思わず手を合わせた。2つの桜に魅了された甲州路だった。
紙面より一部抜粋(2017/04/13発行 東京中日スポーツ、2017/04/12発行 東京新聞)
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