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東京湾に蜃気楼
今月中旬、東京湾で蜃気楼(しんきろう)に遭遇した。目撃したのは千葉県船橋市のふなばし三番瀬海浜公園前の海岸。点在する海苔(のり)ひびのかなたの海面に大型コンテナが浮き上がり、右方向に動く。よく見るとコンテナの下には合体した倒立像も。まるでコンテナが浮遊しているようで幻想的。船体が見えないのも不思議だ。珍しい絶景に魅了された。
さらに双眼鏡で見回すと、多くの船が浮き上がっていた。同じく下には逆さまに合体した船の像も。白く見える東京湾アクアラインも一部浮上して印象的。まるで自然がつくった芸術作品のようで心から感動した。
蜃気楼は大気の温度差で光が屈折し、船や建物が浮き上がったり逆さまに見えたりする現象だ。大きく分けて上位蜃気楼と下位蜃気楼の2種に。
上位蜃気楼は上方に幻の像が現れる。このタイプは珍しく、観望ポイントは富山県魚津市の富山湾周辺など数少ない。下位蜃気楼は下方に幻の像が現れる。「浮島現象」として普通に日本各地で見られる。
今回の蜃気楼は下位蜃気楼。海水の温度が高い東京湾に冷たい空気が入り、光が異常屈折したのだろう。かつて、冬の冷え込んだ朝に蜃気楼を数回撮影したが、冬以外では初めてとなった。
この日は三番瀬の干潟に秋の渡りのシギ・チドリ類など野鳥の撮影で訪れた。涼しい朝に気分爽快だった。その時、目撃した思いがけない自然現象。早朝の2時間ほど見られ、8時すぎには消えた。私のモットー"早起きは三枚の徳"を実感できた一日だった。
紙面より一部抜粋(2015年8月28日発行 東京中日スポーツ)
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